日々耕作

アラフォーひとり。自分が使っている身の回りのもの、映画やドラマの感想、考えてることとか書いてます。

今夜すきやきじゃないど 谷口菜津子/著

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『今夜すきやきだよ』の谷口菜津子さんのシリーズ作。

自立した女性としてバリバリ働き、尊敬できるパートナーと恋愛し、結婚して家族を築く。そんなパーフェクトキラキラ人生に憧れ&その生き方が正解と思っていた自分に響き、号泣した作品のがっつりネタバレ感想。

主人公のたつきは大手広告代理店で働くアラサー女子。
母親は広告業界の大御所で、彼女が10歳までシングルマザーとして働きながら家事も完璧にこなし育てた。10歳のころに母親は再婚。新しい父親の連れ子である7つ下の弟ができる。
たつきは母親に憧れ、母親の期待に応えようと頑張り屋のしっかりしたいい子であろうと必死に頑張る。そのおかげで憧れの広告代理店に入るも、頑張るところがズレていて結果が出ない。出ないどころか後輩に追い抜かれてしまう。

弟のとらおは大学生。数人セフレを抱え込むタラシ野郎だが、ある日、全員に切られてしまう。セフレの家を転々としていたので住むところがなくなり、ひとまずと姉の家に泊まり居つく。
ある日、仕事で落ち込む姉を本当にそうとは知らずクリーンヒットで煽ってしまい怒らせたお詫びに机の上だけキレイにする。やはりそれでも就活という現実から逃げるためダラダラと、「コバエの湖」というB級映画のDVDを見ながら過ごしていた。しかし!コバエが気になって仕方なくなったとらおは、溜まりにたまったゴミだらけのキッチンをキレイにすることに成功。
バイトしろと姉に言われていたこともあり家事代行のバイトをはじめる。

そんなところにパーフェクトキャリアウーマンでありパーフェクトマザーである母親が訪ねてくる。
とらおの掃除代行バイトがあまり気に入ってないようだが、とりあえず褒めておく。たつきは頑張り屋でしっかりしてると褒める。お母さんは仕事していてもごはんを作ってとパーフェクトアピール。
いわゆる毒親ではないが、しんどい人である。すごい人で尊敬を集める人だろう。しかし、そうなりたいと憧れる娘に無自覚にプレッシャーをかけ、血のつながりのない息子には表面的に良い母親をロールプレイしているだけで何もしていない。

たつきは友達にいつも仕事仕事、仕事で忙しいと言っている。休日もいつも仕事をしようとするが溜まっているゴミが増えるだけで何もしていない。
母親の訪問、業界の大御所である母親の子だから入社できたことを知った、バイトでお金を稼いだ弟は自立して一人暮らしをはじめるため出ていこうとしている。たつきはダラしない弟を見て安心していたが、その弟が今までの周りの人のように自分を追い抜き、置いて行かれてしまう。それでも笑顔で元気に送り出す。でも心はどんよりした認めたくないものに支配され限界を向かえそう。そこに忘れ物に気づいて戻ったとらお。一声かけると邪魔しないでねーという朗らかな姉の返事と相反するドアの向こうの空気が気になり、扉を開きカーテンを開け「もう仕事辞めよ!」と、たつきをギリギリで救い出す。

そうして、たつきは大手広告代理店を辞め、いつも食べてる冷凍餃子の会社に転職する。そこで生き生きと働き始め。。とはならない。早く定時にならないかなーと毎日思っている。それでも前職より忙しくないし、なによりムリがない。
弟は力仕事もできるということで重宝がられ、働きっぷりも良いことから正社員の誘いがあり就職が決まる。

こんな感じで二人ともキラキラしていない。二人ともいい教育環境で育てられているので、いい大学を出ていい会社に入り、躓いたり失敗することもあるけど、これまたキラキラな上司、同僚、恋人、友達に囲まれ自分らしく頑張って生きていこう☆系キャラクターなのに。
なのにキラキラすること一切なく等身大に空気をいっぱい吸って生きている。それで私は、ああキラキラしてなくていいんだと初めて思え号泣した。そう思いたかったことにもまったく無自覚。
漫画やドラマとか映画に出てくる女性はスーパーウーマンですからね。そうしたものばかりに触れていた私は、そうした生き方が正解どころか大人とは皆こうなんだと思ってたな。。怖い。おかげさまで私は所謂キラキラな仕事をしています、とはならずキラキラしてる人たちにとライトを浴びせる存在として生きてます。
働き始めてから最近までずっと、こうした自分が正解とは思えず。しかし正解に導くこともできずで苦しくてイライラしてるだけだった。アラサーあたりなんてネトウヨ思考に染まってたし。

そして最近ようやく、キラキラしたものにならなきゃという考えのせいで、それを目標にして、高すぎるから何もできないということに気づき始めたところ。自分ができるところで、自分をどうにか上向かせる努力をしたい。
みんな、そうやって努力してることに気づかなかった。というか、努力は選ばれた人がやるものだくらいの考えだったかも。選ばれたとまではいかないけど、正社員として職を与えられた人たち。私はそうではないので、その努力をしていい人間とは思ってなかったんです。
正社員として働く人はそうせざるを得ないことが大きいんだけど。そうしたこともわかってなかったり。

自分の人生の舵取りが苦手だ。罪悪感がどうしてもある。同じような人はいるだろうか。
ただ舵取りしないと生きてはいけぬから、資格取得に向けて勉強しようと思って、またやらなかった日曜日にこんな感想を書いている。