日々耕作

アラフォーひとり。自分が使っている身の回りのもの、映画やドラマの感想、考えてることとか書いてます。

羽ばたいてほしかったマイ・フェア・レディ

年越し映画マラソンと題して、NHK BSで放送された本作。

1964年に制作。
粗野な花売り娘のイライザ(オードリー・ヘプバーン)が、ある日出会った言語学の教授の下で、一流の花屋になるために言葉や所作を学びレディとなるミュージカルドラマ。

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 オードリーが合ってないという印象。かなり訛りが酷く言葉使いも乱暴な花売り娘なんですが、丁寧にお手本通りに演じてる感が強く出てしまいちょっとしんどさを感じます。
あと、個人的な好みなんですけど、オードリーのか細さと、あの大きな目が声量の大きさと相まって、うるさくて落ち着かない。それでも、見事に社交界の花となる場面はさすがの美しさ。

昔の映画なので、イライザの粗野を直してやろうと教授が先導するとこから始まるのかなと思っていたら、そうではなく、彼女自身が一流の花屋となるため、教授を訪れ、きちんと授業料も払うから教えてほしいと「対等」な振る舞いから物語は動くのです。
授業料を払うというのは彼女が自分でお金を稼いでいたためでしょうし、教授に対する尊重、社会性もある精神的にしっかりと自立した女性であることが伺えます。ただ、彼女の環境は父親が稼ぎを飲み代に奪っていくような労働者階級の中でも下と言わざるを得ないところで育ってきたよう。そんな場所で生きていたせいかとっても気が強い。
ちなみに、彼女の申し出を受け入れた教授は、同居している大佐と彼女が成し遂げられるかをこっそりと賭けにします。



彼女の粗野な言葉の重要なポイントは「h」を発音できないこと。「I」の発音が[ai]ではなく[ei]になってしまうこと。そこで、あれやこれやとヘンテコな機械を使ったりして何とか「h」を発音させようとするも上手くいかない。そんなこんなで、何でかわからないけど「h」が発音できるようになる。1つの成功を掴むと他もパズルが埋まるように上手くいく。彼女は夜も眠れないほどの喜びに包まれ勉強に励み、レディへの階段を昇って行く。
喜びに満ちる彼女の歌はこちら。元は知らなくても曲は知っている人が多いのでは。私も元は何も知らずよく口ずさんでました。

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そんな彼女を披露しようとアスコット競馬場へと連れ出します。
そこでの衣装が有名なこちら。

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こんな豪華なドレスを着て行くアスコット競馬場とは?
イギリス王室が所有するやんごとない競馬場。毎年6月にロイヤルアスコットという王室主催のレースが開催され、それに出席する淑女達のユニークな帽子で注目されるところですね。

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ドレスコードがあるそうなんですが、映画の中では、白黒で統一された衣装で着飾っているせいか、華やかというよりちょっと不気味さを感じました💦でもオードリーのこのドレスは、モダンとクラシックが組み合わさった決して色褪せない見事なデザインと思います。
競馬を観覧するイザベラ達。白熱する様子に思わず興奮し、オッサンのごとく汚い言葉を発してしまうイザベラ。周囲はそりゃーびっくり。教授と大佐はあちゃーと頭をもたげるのみで彼女をフォローしない。
しかし、そんな彼女に惚れたフレディという男性が!彼は家まで行き愛の歌を唄い、ラブレターを渡し去っていきます。その後も毎日行って手紙を出してた模様。

エリザベス女王が出席される大使館のパーティーに出席する予定なのに、これで大丈夫なのかと心配するも、当日、美しく着飾りまるでプリンセスのような姿の彼女が階段に現れると、そんな心配は消し飛んでしまいます。簡単だな。。

会場へ着くと彼女は注目の的。そして、女王が登場し各人に挨拶する場面でイザベラは女王の目に留まり、妖精のようだと褒められ、息子のダンスの相手にと選ばれるのです。
女王の目に留まったことでパーティーの主役となるイザベラ。教授は自分が嫌いな男の鼻を明かしてやろうと、ダンスの相手をさせるその場面、イザベラは明らかに戸惑っていることに気づかない。
そうして、無事にパーティーで完璧に務めを果たして家に帰ると、教授と大佐は大大盛り上がり、あいつの鼻を明かしてやったぞバカなやつだと、そりゃー下品な自画自賛ソングで盛り上がる。靴を脱いでイザベラに片づけさせる。片づけるシーンは初めてなんですけど、いつもやっていることが十分伝わります。

盛り上がりまくる2人とメイドと執事たちをよそにイザベラは明らかに怒っている。しかし誰も気にも留めない。皆が去った部屋でついに泣きだすイザベラ。そこに居合わせる教授。どうして泣く理由があるのかと尋ねると、自分はもう用無し、これからどうすればいいんだと怒り嘆く。
君は顔はいいからすぐ相手が見つかる、結婚でもすればいい。花屋になるなら金を出してやる。私はあなたのメソッドに習い、言葉を教えることを商売にすると言うと、お前みたいなドブねずみにそんなこと出来るかと馬鹿にして笑う。収拾つくはずもなく喧嘩はヒートアップ。ネズミて。。
身に付けている宝石はどうしたらいい?何を借りてるかきちんと書かなきゃね。あなたに貰った指輪はどうしたらいい?に対し、家でもなんでも持ってけ!。犬も食わぬ言い合いである。
教授はどうしてこれほどナーバスになり、怒りをぶつけてくるか全くわからないんです。そりゃこの人には無理だよ。。

ついに翌日、思い知るがいいと出て行ってしまうイザベラ。家を出たところでフレディに遭遇。
手紙は読んでくれた?愛してる~と愛の言葉と歌を捧げ始める彼に対し、返すのはこちらの歌。これもメロディーは聞いたことある人が多いのでは。

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言葉はもううんざり(イザベラに関しては本当そうだろう)行動してみせてよ、抱きしめてよと歌う彼女を見ていると、なぜあれほど怒っていたのかが想像できてくると思います。でも、おかげでいやそれは止めとけ、錯覚だよと嫌な予感が芽生えるのです。

彼女はかつて花売りをしていた場所と父のもとへと戻るも、父は教授のイタズラで資産家となっていました。(そんなんで金持ちに。。)
彼は世間体のために結婚しなきゃいかん、委員会の代表にもなり、家族は2人から50人に増えた。道徳を受け入れ自由を失ったと嘆いています。でもお前が帰ってきても金やらねーぞと相変わらず。

父のもとにも居られないイザベラは教授の母のもとへ。彼女はイザベラの怒りや不満に理解を示し、家に居ていいのよと優しく受け入れてくれます。
その頃、イザベラが家を出て行き、不満と悲しさに包まれる教授。
母の家にいるとわかると飛んで行き、連れ戻そうと上から目線で挑む。イザベラは大佐は私を尊重して一人の人間として扱ってくれた、あなたは私を賭けごとの対象としてか見ていないと、きちんと離れた理由を話してるのに、教授とくると君の声が録音してあるレコードがあるけど、そこに君の心は無いなんて、いきなりロマンチックなこと言うものだからイザベラの気を逆撫でするだけ。
なぜと母に尋ねるも、当然でしょと呆れられる始末。

イザベラを取り戻せないまま家に帰る教授。彼女の練習を録音したレコードを流しはじめ、まるで彼女の声を抱きしめるように聞き入ります。そのレコードを止めるイザベラ。
私の上履きはどこだ?と、足を投げ出す教授とイザベラの2ショットで幕を閉じる。



イザベラが教授の嫌いな男のダンスの相手をするところでザワっとしはじめ、怒りを露わに→Show meで、ああ。。けど、教授母との場面で大丈夫ではと期待するも、最後は結局結ばれてしまった。しかも最悪のところで。ねずみ呼ばわりした男だよ!?

教授は独身主義で男こそ至上の存在、男同士こそ素晴らしいと強く信じる男性。女体は好きだが女嫌いでもなく、マザーコンプレックス故の女嫌いっぽいです。自立して社会的地位もあることで全能感を持ってしまったイタイ人。
女はダメだ、男は素晴らしい~なぜ女は男のように振る舞えないのかと高らかに歌い上げてる時のやんわり引いてる大佐の顔をご覧よと思うが、決して気づくタイプではない。そんな歌を唄う自分の振る舞いを良しとする時点で十分やばいのだから。

教授って、こういう僕はそんな振る舞いしませんよと、そんな振る舞いをした後で言うんですよ。酷い言葉を大声で浴びせ、さんざん否定しまくっておきながら、俺はそんなことするような男じゃないと自画自賛。マジなトーンでいくと自己愛性人格障害じゃないか。やばいって。
男は素晴らしいと歌い上げるも、その内容というのは、ジャンプといった漫画ばかり読んで、男同士の友情こそ至高と信じきって現実を見ていない、非常に幼稚で空想の世界をリアルと信じ込んでいる男ソング。これを40か50くらいのオッサンがニッコニコで歌うんですよ。マンさんと女叩きに勤しむ人もこれを見たら己を鏡で見るようで恥ずかしくなるかもしれません、てくらい強烈な歌です。

この歌詞といい、イザベラの歌といい、たぶん、制作陣は2人をくっつけたくなかったのではと願望込々で思っていて。スタジオが世間が求めるハッピーエンドは男女が結ばれることだ!くっつけろ!ということで、家に帰ってきたイザベラだけど、また出ていくかもねとも取れそうな絵で終わったのではと思います。
ただ、人によっては最後、イザベラは微笑んでいたと書いてる人もいたりで、見る人によって様々だなと。私には微笑んではおらず、どうとも言い難い表情に見えたんですよね。
ツンデレ同士なカップルと微笑ましく見るには教授の歌が強烈過ぎて。彼は童貞なんだよと生暖かい目で見てあげる度量が私にはなく、ええええ(-"-)と不満な気持ちが最後の最後でフルになる作品でした。

その系統でいうと、プラダを着た悪魔ですね。あれも、はあ~!?お前の価値が全てをジャッジするのか?今まで積み上げてきたもの全否定かと、大人になってからは納得できない映画になりました。
あの彼氏役の人が監督だから余計に。あれだけ否定しておきながら、実生活ではモデルとばっかり付き合いそうなタイプに見えるから。

モヤモヤしますが、マイフェアレディは貴族社会を舞台にした作品なので、そこに登場する衣装は目の保養です。画面を通してわかる生地の繊細さとなめらかさ。贅沢ですねぇ。